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信長のあとの天下を握った秀吉は、本願寺に寺地(現・京都西本願寺)を与えて、本願寺の門徒勢力に対して、懐柔政策をとりました。
続いて江戸幕府を聞いた家康は、さきの石山合戦で最後まで抗戦を主張し、隠居の身になっていた本願寺の教如に寺地を与えます。
これが、現在の東本願寺です。
そして、全国におよそ2万ヶ寺あった本願寺の寺院は、東西に二分します。
家康の心の底には、強大なカを持つ本願寺の勢力を、何とか分散させたいという気持があったのかもしれません。
家康から秀忠、家光と続く江戸幕府は、寺社奉行をおいて、全国の寺院や神社を管理し、把握するにいたります。
これによって、お寺が幕府支配の末端機関となり、檀信徒の戸籍を掌握し、人々は宗教的自覚とはかかわりなしに、自動的に仏教徒として登録されることになったのです。
有名なキりシタン禁制が発端でした。
幕府は鎖国をして、徹底したキりスト教徒弾圧の政策をとります。
このために、人々に仏教への改宗を強い、きびしく監視させました。
「宗門改め」です。
これにより、すべての人々は仏教の中のいずれかの宗派寺院の信徒にならなければならないということを義務づけた「宗門人別改帳」を提出させます。
国民総登録制といっていいでしょう。
ですから、全国のすみずみまで戸籍役場としての寺院が設立され、仏教の大衆教化がさらにすすみました。
それが江戸幕府の仏教保護政策による自由な宗教活動だったかというとそうではなく、寺院はきびしい統制下におかれていましたからこの時代には、例を除いて新しい仏教宗派は誕生しませんでした。
すべての日本人が仏教徒として位置づけられるのは、仏教教団にとっては好ましいことでしたが、反面、仏教界は、権力の側につかせられることによって、自由な宗教活動が制限されたといえましょう。
といっても、その問「家の宗教」という遺産が残された事実は、評価しなければなりません。
明治維新によって、徳川の政権は消滅し、このとき新政府の手で、新しい国家体制の精神的支柱として国家神道が採用されました。
神道の純潔性を強調しようと「神仏判然」という政策がうちたてられます。
つまり、それまで有名な社寺において、日本古来の神道と仏教とが、神は仏ののもとに習合されていたのを、判然とせよというのでした。
明治から昭和にいたる近代日本の「国体」が、天皇を頂点とした国家神道思想に。
国民はすべからく神に詣で、天皇家の斎宮たる伊勢神宮の神宮大麻を配ることを強制された中で、「家の宗教」としての仏教徒の流れは、途絶えることはありませんでした。
釈毒事の遺骨を納めるインド・サンチ一大講の門。
これが日本の神社の鳥居のルーツといわれる。
これは、仏教教団を担ってきた宗教者たちの努力というよりも、徳川時代に培われた「家の宗教」そのものの根強さにあったといえましょう。
そして、家父長制度が温いっこうに後退し存され、「家」の意識は、ありませんでした。
したがって、戦後の「核家族」誕生いらいの「家」の崩壊が問題化している中で、「家の宗教」がどのような行方をたどるかは注目されるところですし、それぞれの教団の指導者たちが宗祖にかえれ。
スローガンのもとに、家の宗教から個人の宗教的自覚による信仰へのUターン運動を、熱心に繰り広げているゆえんもここにあります。
しかしながら、肉親の死やご先祖への追慕によって、仏教へ参入する機縁に恵まれているのは尊いことといわねばなりません。
ご先祖をしのんで、先祖も共に拝んだ仏に礼拝を捧げることは、遠い過去から伝えられてきた「いのち」の確認にほかありません。
そうして自分たちもまた、いのちを後世に伝えてゆかねばならないという使命をたしかめるのです。
いろんな出来事が生じます。
目先のことにとらわれて、つい心が乱れがちになるとき、遠い祖先から伝えられたいのちを思い、このいのちが、速い後の世まで伝えられるごとを思えば、そこにおのずから「大いなる世界」が直覚されることでしよう。
ここに、合掌の生活の意味があります。
仏前に礼拝し、ご先祖に感謝のこころを捧げる生活こそ、より充実した人生への、たしかな歩みであるといえるでしょう。
一般にいうお寺とは、大きな伽藍をつらねた有名な寺院や、おおぜいの人が拝観する観光寺院だけではありません。
日本の全国いたるところ、古い町や村で人々の信仰を支え続けている無数のお寺です。
今、この数はおよそ八万ヶ寺といわれていますが、これらのお寺の特徴は、地域の中心にあって、まるでお寺をとりまくような形で町や村が構成されていることです。
もちろんなかには2ヶ寺、3ヶ寺とお寺同士が集まっているような例も珍しくありませんが、一ヶ寺、一ヶ寺が点在して、それが地域の「核」のような形になっているのです。
あわただしく日を送ってしまい、私たちを絶え間なくはぐくんでくれている大きな患みや、長い長いいのちの流れに支えられた自分をとり戻す機会はなかなかありません。
お寺の鐘こそ、そういうあわただしい日常への警鐘でしょう。
お仏壇は、この村のお寺を家庭の中に持ち込んだようなものです。
お寺が村や町の中心に位置するように、お仏壇も一家の中心に位置して、日々の生活のりズムを整え、日常まるで忘れがちな感謝の思いと、大きないのちの流れに自分たちをとり戻す、心のよりどころなのです。
仏教の理想とする覚りの境地は、厳しい修行や哲学的な思索によって深められていくという理解が一般的でしょう。
しかし、そういう特別な人でなくても、日常の生活からにじみ出てくる美しい精神世界を高めていく中で、仏教の理想とする境地をまのあたりにするものでなければなりません。
その教えを、こう味わったらどうでしょうか。
なるほど、私たちのいのちには限りがあります。
しかし、私のいのちは、この世に突如として生まれてきたものではないと同時に、私の肉体の滅亡をもって終息するのではなく、子や孫の代にわたって伝えられていくものなのです。
いわば私たちは、遠いご先祖から両親へ、そして私へと受けつがれてきた永遠のいのちの営みの中にあり、そのいのちは限りなく続いているのです。
今、「いのちの尊さ」ということがいわれます。
ほんとうのいのちの尊厳とは、単なる肉この永遠なる営みの中体の維持ではなく、のいのちをたいせつにすることでしょう。
そのいのちのたいせつさを確かめるのがほかでもなく、お仏壇の前なのです。
親から子へ理屈で教えるより、まず自分ののち」に目覚めることです。
朝晩、お仏壇に手を合わせ、仏を礼拝し、亡き人やご先祖をしのび、先祖と共に生かされてある今日に感謝の生活を打ち立てることによって、「家」が築かれるといっていいでしょう。
お仏壇を中心とした暮らしでは、もちろん一家がうちそろって朝にタにお仏壇の前に礼拝するのが望ましいのですが、生活が多様化した今日、そうしてもおれません。
両親の出動時間と子どもたちの通学時聞がほとんど同じというのは、今では奇跡にちかい状態ですし、場合によっては、閉じ家に暮らしながら、親と子が何日も顔を合わせないでいるということさえ不思議ではなくなってきました。
こういう日常の中でこそ、お仏壇を中心にした暮らしがたいせつになってきます。
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